自分の職場への通り道に田んぼがある。そこが工事が始まったようだ。大きなトラックが土砂を運び込み、ブルドーザーが土をならしている。ここに何が建てられるのか。お店だったら便利になるかな、と考えたりした。
さて、自分の関心は本当は別のところにあった。先日DVDをみた『もののけ姫』の物語を思い出した。木を切って「たたら場」を拡張しようとしている人間の行為を思い出した。そう、自然と文明の対立を思い出した。
ここは、昨年までは美田であった。水がはって、たくさんのオタマジャクシとアメンボウが泳いでいた。小動物達の生息地であった。彼ら達は土の中に冬眠していたのだ。
ところが、「太平の眠りをさますブルドーザー」がたくさん押しかけてきて、彼らの安息地が大変なことになってしまった。掘り返されたカエルや虫を狙ってカラスがやってくる。あるカエルの冬眠場所の上はコンクリートで覆われて、永遠に日の目にあわなくなった。
などと、センチメンタルなことを考えた。自然と人間の共存、難しい。ここら一帯も昔は鬱蒼とした森林だったのだ。しかし、江戸時代あたりに農民達が切り開き、田んぼを各地に作った。そのシステムが代々とできあがり、カエルたちも代々長らく先祖達と同じような生活をしていた。
その家系の連鎖がついに切れたのだ。この地に住んでいたカエルの一族は全滅だ。滅びの美学を自分は感じようとしていた。
自分の住んでいる安アパートももともとは田んぼを埋め立ててできたアパートだ。私の今すわっているソファの下の床下の地面にはたくさんのカエルの魂がさまよっているのかもしれない。
カエルたちよ、ごめんなさい。カエルの霊魂よ、安らかに、と祈るだけだ。
追記 2019-04-27
この場所には格安スーパーが作られた。値段はかなり安い。スーパー同士の値段競争は厳しいようだ。
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