卒業論文の中間発表会があった。

卒業論文の中間発表会があった。学生が自分の研究していることを発表するのだが、今は10月の終わりであり、学生にとっては、あと3カ月ほどで論文を提出しなければならないので、大変忙しいのではないか。

ある学生は、「錬金術と不老不死」をテーマに取り上げていた。どうやら、錬金術を研究していたら、不老不死へ関心を持つようになった、という発表説明だ。

昔、ある友人がユングの『心理学と錬金術』という本を私にプレゼントしてくれた。面白かった。それによれば、ユングは中世の錬金術の本をたくさん読んだ。ユングはラテン語が自由に読めたようだ。錬金術とはある金属とある金属を融合させて完璧な金属を作り上げる技術(秘術といってもよい)である。

それらの秘術の本では、図版がたくさん記されている。それらは、男性の役割をする金属と、女性の役割をする金属を完全融合させると、子供(黄金)が生まれてくる。黄金を生み出す原材料となる金属を探すことが先決だが、その融合の方法も大切である。図版はそこでは、丸い形や四角い形が組み合わさった、曼荼羅のような形を示して、黄金が出現する最終段階を表している。

曼荼羅はインドの哲学者が瞑想して完全態をイメージして書き上げたものだ。ユングは心理療法を行ったが、心を病んだ人の見る夢に着目した。治療が成功して、回復するにつれて、患者の夢が次第に変容していく。当初はバラバラの形の夢しか見なかったが、次第に夢の中に丸い形、曼荼羅のような姿を見るようになっていく。そして回復していく事例をいくつか出会った。ユングは曼荼羅のような形は完璧な図形であると考えた。その証拠に、インドの哲学者も心理治療を受けた人が回復していく過程で最終的に見るのは曼荼羅のような図形である。

photo credit: mccordworks gp-mandala-frvan-banner via photopin (license)

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錬金術師は金を作り上げようと図形を秘伝書に示したが、不思議と黄金が出来上がっていく最終段階は曼荼羅のように、丸と四角が巧妙に絡まった図形になるのだ。

ユングが言いたいのは、曼荼羅の図形は完璧な姿形のイメージであり、人間には普遍的なイメージである、と言うようなことだったろう。

卒業論文の中間発表で「錬金術と不老不死」をテーマにした学生には、そのようなことを述べて参考にしてあげたかった。しかし、時間もないので、30秒ほどそんな話をした。自分が思うには、不老不死とは人間の完成体であるから、錬金術と絡ませるならば、曼荼羅のような図形をキーワードにすれば、論文は描きやすいのではと思った。

さて、自分はこれから寝るのだが、夢は曼荼羅のような姿と出会いたいと思う。

photo credit: hjw223 Mandala of March 7 via photopin (license)

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