30歳の女性とは


『赤と黒』をゆっくりと読んでいる。19歳のジュリアン・ソレルが30歳のレナル夫人と出会う場面は印象的だ。レナル夫人は上流階級の苦労知らずのお嬢様だ。上品で優雅で、心優しくて、無菌培養の世界に育った人だ。そして、一切の汚れがない上品さが特徴である。

自分はこの小説を中学2年生の時に読んだのだが、世の中にはこのように優美さの極致みたいな女性もいるのだな。自分もそんな女性といつかは巡り会えればいいな、と願っていた。

さて、自分は今は68歳である。色々な人生経験を積んできた。この小説の中に登場するレナル夫人のような女性はあくまでも小説の中の話であり、現実にはそんな女性はいないと断言できる。

自分の感じては、男性よりも女性の方が、より現実的であり、より打算的のようだ。ましては、レナル夫人の年齢、30歳にもなった大人の女性が、こんな浮世離れした考えを持つものか、と疑問に思ってしまう。

しかし、それでも、浮世離れしているからこそ、この小説は面白い。現実にはあり得ない純粋の愛を描いているからこそ、打算の世界で生きるのに疲れ切った男女にアピールする点は大だと思う。

他の側面をも触れてみたい。主人公のソレルはナポレオンを尊敬している。フランスの外れにあるコルシカ島出身の貧しいが才気あふれる青年ナポレオンが次第に出世して、最後にはフランス皇帝の地位までたどり着く。ソレルはナポレオンの一生に自分を投影している。

田舎の貧しい青年の出世していく姿、その野心は、昭和時代までの男子には理解でき共鳴できるものだったろう。

そんなことを感じながら、少しずつ、この小説を読み続けている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください